オープニングスピーチ(審査員長:ローレンス・カーディッシュ)
【レポート】なら国際映画祭2010の初日、8/25のオープニングセレモニーでのスピーチです。
奈良のみなさん、そして映画祭へおいでのみなさんへ
このたび審査委員長としてなら国際映画祭2010に参加させていただき、非常に光栄に思います。また、奈良というたぐいまれなる場所に来られて大変感激しております。
奈良は1300年前に新しい都として芸術を開花させ、日本独特の文化を育みました。このような畏敬の念に満ちた都において、最新の芸術である映像と、芸術の豊かさを結び付けるプロジェクトの第一歩に関われましたことは、とても嬉しく、胸躍る気持ちがいたします。
このプロジェクトは映画監督である河瀬直美さんの考案により開始されました。河瀬監督のルーツが奈良にあることを考えると、非常にふさわしい取り組みだと思います。河瀬監督は詩的な感受性をお持ちで、作品の人間性や独特の美しさ、奈良や奈良周辺の映像が世界中で高く評価されています。
河瀬監督と、なら国際映画祭実行委員会の鷲田清一理事長、そして実行委員会のすべてのメンバーの方々に心よりお祝い申し上げます。
みなさんは奈良の最高のものと、近年の業績である映像との間に、強い関係を築かれたのです。奈良には、世界最大で最古の木造建築物や日本最大の青銅の彫刻や公園がありますね。また、世界最古の印刷物は、百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)という百万の塔に納められた呪文だそうですが、それは奈良で764年に発行されたと知りました。これは、奈良のDNAに、コミュ二ケーションを測りたい、外の世界に触れたい、という希望や能力があることを示唆しているのだと思います。
映画祭は、偉大なコミュニケーターの役割を果たします。映画祭において、さまざまに異なる考えは文化的に優しく融合し、映画祭に参加する人たちは世界への理解を深めます。そして世界中の映画ファンは、奈良に目を向けるのです。この映画祭の後も引き続きここ奈良の町から、現在、未来の世代の人たちが新しい映画を見て楽しみ、大切にしていかれることを願ってやみません。
審査員長
ローレンス・カーディッシュ
ニューヨーク近代美術館 映像シニアキュレーター
2010年10月20日 18:41